2009-02-10

「近現代の戦争と芸術・文化・社会」

映画専門大学院大学 加藤厚子先生の「近現代の戦争と芸術・文化・社会」
近代戦争の展開と、映画の発展がどのように関わっていたか?を学ぶ授業です。

映画とは何か?から始まり、戦争を遂行するための「国民」意識の創出や、自国の産業や文化の先進性、軍事行動の正当性を主張するために映画が利用されたこと、しかし必ずしも軍国一辺倒の検閲ではなかったこと、など、映像を交えながらの講義でした。

実際に、内務省の検閲をパスして上映された娯楽映画を観ましたが、戦争に突入していた時期とは思えないようなユーモアのある映画でした。今観ても全然古臭くなくて。
先生もおっしゃってましたが、検閲=軍国主義の映画一色、では必ずしもなかった点が意外。

でも勿論、戦争を正当化し、国民を駆り立てる思想がしっかり盛り込まれた映画が主流です。

「蘇州夜曲(支那の夜)」
李香蘭&長谷川一夫
<理知的で誠実な男性>―<愚かで感情的、男性に導かれて更正する女性>のイメージを利用して
日本―中国の支配―被支配を正当化する手法が使われている。

「新しい土」
アーノルド・ファンク監督、16歳の原節子が出演。
同盟国である日独お互いのイメージを高めるための映画。
最後のシーンで、新天地満洲への移民を理想化して描く。

などなど。
(*この2つは、youtubeで部分的に見られました)

こう紹介すると誤解がありそうですが、プロパガンダに使われた=芸術的価値がない、ということではないです。勿論、その背景にある戦争やジェンダー観は全く誤ったものですが。

芸術は、それが生み出された時代背景、社会状況から離れて存立することはできないのであって(放送授業の「芸術の理論と歴史」をぜひ!)、映画もまた誕生から、社会状況、特に近代戦争と結びついて作品が生み出されてきた、ということを学ぶのが、この面接授業の目的だと思います。

授業はとても充実していて、先生のちょこっとしたユーモアがあったりして次回も楽しみなのですが
文京のモニターは笑っちゃうくらい小さい。映画の授業なんだけどなー。