2009-10-06

”バージニア・スリムは女性のためにつくりました。生物学的に男より優れているから”




1960年代後半からアメリカで起こったウーマン・リブ運動の巨大なうねりに乗って、大成功を収めたのがタバコ会社である。

社会における女性の身体イメージにおいて、劇的な変化を必要としたウーマン・リブは、「産む性」そして「周縁性=穢れ」から解放された身体像を求めた。産む身体に必要な脂肪がついた身体、血液と交わる周期的な身体、そういった現実の身体性を削ぎ落とした”新しい”女性の理想身体。それは細く、力強く、これまで女性の身体が持っていた豊かな意味性を、ファッションに転化した身体である。
そして、そのイメージに接続することで劇的なイメージの転換を果たしたのが、タバコであり、その代表銘柄がバージニア・スリムであった。

1970年代初頭のアメリカにおいて、バージニア・スリムの広告は最も人気のある広告キャンペーンとなった。キャッチフレーズは常に、”You've Come a Long Way, Baby.”(長い道を来たじゃないの、ベイビー)。つまりウーマン・リブ、女性解放に至る長い道のりに重ね合わせて発信したのは、女性の喫煙は悪であり制裁されるべきであるという社会通念から、ついに解放される時が来たというメッセージであった。
バージニア・スリムの広告は、喫煙という行為、更に言えばバージニア・スリムを吸い続けるという行為が、女性の伝統的イメージに反抗する、最もクールで効果的なアクションであるというイメージを植えつけることに成功したのである。

上の画像は、70年代のバージニア・スリムの広告のひとつ。
最も”らしく”、どぎつい例かもしれない。下部にはお決まりの”You've Come a Long Way, Baby.”、メインのメッセージは、”We make Virginia Slims especially for women because they are biologically superior to men.” 「私達はバージニア・スリムを特別に女性のためにつくりました。なぜなら女性は男性よりも生物学的に優れているからです。」